奈落ber


彼はよく一人で私にはわからないことを考えている。考えていることが好きなのか、それともただぼーとしているのが好きなのか私にはわからないけど、とにかく私はこのことが腑に落ちないの。
今日こそ何を彼が考えているのか解明いたします。

「……先程から、なにを見ている」
「奈落を見ています」
「……」
「え?返事はないのですか……?」

窓の外を見ていた奈落は少し溜息をつき、行儀よく正座をしている私の方に視線をむけた。

「……なぜわしを見る」
「何を考えているのかな??って」
「お前に、教える必要はない」
「……ケチ」
「……」
「おたんこなす」
「……」
「改造人間」

我ながら子供っぽい言葉の欄列だと思う。
けど静かにその言葉を聞いていた奈落がふいに私に向かい手招きをしたから、私は慌てて立ち上がり、彼のもとへ向かった。
そして、いきなり彼の膝の上に乗せられ抱きしめられた。

「なっ、なっ、なっ」
「お前は、わしに相手をしてほしいのだな……?」
「いや、ち、違う」
「くっ。そこまでの頼みなら、無下にすることはできまい……」

頼もしい腕に抱きしめられながら私は思った。
こんなのもたまにはいいかな。