犬夜叉ber


「犬夜叉!」

突然名前を呼ばれたから、俺はためらいもなく振り返る。
どうせ、俺をこう呼ぶ女は決まっているから。

「なんだよ」
「私は前々から、思っていたんだけどね。今日だけ言わせてもらうわ」
「なっ……何言ってやがる」
「まぁ、ちょっとだけしゃがんでよ」
「ん、こうか?」

少しだけしゃがみ、こいつの目線に自分の目線をあわせる。
日頃見下ろしてばっかりだから、こう目線が同じだとなんだか照れ臭くて、俺は少しだけ目線をそらした。
嬉しそうに、両腕が俺の顔にのびる。
この距離だと何かしら期待を抱いてしまうのはいけないことだろうか。
心臓の鼓動が速くなる。

「も?犬耳触りたくてしかたなかったんだよね?!かわいい?!!」
「へっ!?」

俺の両耳をくいくいと触っているのがわかる。
こいつの狙いは最初から俺の耳だったのか!?許せん!!

「てめぇ!なにしやがる!?」
「えー!いいじゃない!減るもんじゃないし」
「うるせぇ!離しやがれ!!」
「やだ!」

こいつを力づくで離そうとした瞬間、体制を崩したのか俺の腕に倒れて来た。
慌てて、抱きしめれば、離したくなくなる。

「あの……これは……?」
「……うるせぇ」

後少しだけ、抱きしめといてもいいよな?