不覚だった……風邪をひいてしまった。私は一人、布団の中に入り足を抱え込んだ。風呂から上がった時に次の日は休みだし髪なんてドライヤーで乾かさなくたって生きていけるさ★とか思い早々にベットにムグリこんだら、この様だ。どうやら、私のスーパーな寝相のせいで布団がベットから落下。その上、肌寒い季節だというのに窓を開けっ放しにしていたから、濡らしていた髪を冷やし、体まで冷やし、鼻水まで凍らしたようだ。一生の不覚!テッシュで鼻水を拭きながら、一人寂しい休みをおくる私。風邪の時って、人恋しくなる。誰か来て〜。そして、私のためにお粥作って〜。



「そこで、何をしている」



聞き慣れた声に頭から被っていた布団を目の下まで引き下げてみると、そこには殺生丸が相変わらず無表情に私を見下ろして来た。ってか、人恋しかった私のテレパシーが通じたのか!?すごくね?そして、なんで勝手に部屋に入ってんの?玄関のチェーンかけといたよね、私。



「いつまで寝ている。早く起きろ」
「いや……私、風邪をひいてしまいました」
「風邪……?」



殺生丸の綺麗な眉毛がぴくりと動いた。人恋しかったけど、なんでよりによってこいつなんだよ。と彼氏に思ってしまう私。でもね、この人自分命だから、風邪なんか私がうつしたら殺されるかもしれないからさ。ほら、あの不機嫌そうな顔を見てよ。なに、風邪なんかひいてんだよ、このメス豚。とか思っているよあの人。だって眉毛がぴくぴくしてるもん。どうせなら、かごめちゃんとか珊瑚ちゃん。百歩譲って邪見が来てくれたほうがよかった。



「うん、……私風邪ひいちゃったの……だから、帰っ」
「熱は計ったのか」
「え……計ってないけど……」
「計れ」
「いや、……布団から出れn」
「計れ」
「……はい」



なんだよこいつ!?人が風邪の時も命令しやがって!でも、怖いから絶対言わないけどね!のそのそとベットから下りる。あー髪とかセットしてないし、下パジャマ(しかもキティ柄)だし、今のかっこう恥ずかしいな。と思っていたら、今まで私の姿をドアの傍からまさに成人君子のように立っていた殺生丸が動いて、私の傍に来た。自ら近づいてくるなんて、殺生丸らしくない、と訝しく見つめれば彼の腕が動き、綺麗な手が私の額に触れる。どうやら、熱を計っているみたい。冷たい手の平が気持ちいい。こいつも、人並みのことするんだなー、と初めて感動してしまった私。お母さんは嬉しくて涙がでるよ。



「熱は……あるな。何か食べるか……?」
「あ……うん。食べる」
「わかった」



そう言い残し殺生丸はさっさと部屋を後にした。も、もしかしたら。これはまさか!あの、私についらっしゃ〜いの、あの殺生丸様がこの私のために、ご、ご飯を作ってくれるのでは!?まさかの、事態に熱が一気に上がる。そんな夢だろう!?普段一応、彼女というカテゴリーに入る私のことを無視したり、または……無視したりするあの人が!?プライドが誰よりも高くて、実はけっこうエッチとか好きな、あの人が!?嘘だろう!夢か!?熱が見せた幻覚じゃないわよね?いや、現実だ……。こんな嬉しいことはないよね。いそいそと布団に戻り、布団を被り直す私。あ〜楽しみだな〜。この前、私のチャッピーを壊したこととか許してあげよう。でも、あのチャッピー事件は悲惨だったな〜。サンショウオウのストラップを見せた瞬間に、奴は無表情に握り潰してチャッピーを粉々にしたもんね。なによりも可愛かった、チャッピーを私は永遠に忘れないよ。いや、待てよ、新宿待ちぼうけ事件もなかなか酷かったな。二時間待ってもあらわれないから、なんでこないんだよーって電話したらさ。一言めが「ああ……そうだったな」だよ!あれは酷かった。もう、別れてやろうかと思ったね私。まぁ、これも許してあげよう。ああ〜思い出したら、きりねぇな。こんなプライド高くて自己チューな人とよく、付き合ってられるよね私。いや、顔はいいよ。背も高いし。街とか歩いてたら、必ず女の子の目線独り占めだし。頭いいし、家金持ちだし、跡取り息子だし。うん、それに実は優しかったりするんだよね。実は優しいことしってるんだよ、私。猫とか犬とかが捨てられてたら、必ず拾ってきたりさ。子供とかも好きなの知っているんだ。あんたの子供なら産めるなって思ってるんだよ私。あーなんか、自分では気付いていなかったけどけっこう、私殺生丸にべた惚れなんだな。えへへ。寝ながらそんなこと思ってたら、がちゃりとドアが開き、殺生丸が土鍋を手に現れた。どうやら、本当にお粥を作ってくれたらしい。な、涙がでそう。



「これ、殺生丸が作ったの……?」
「……」
「食べていい?」
「ああ、のために作った」
「殺生丸……!」



もうだめ私あんたのこと大好きだわ。死ねるわ、ありがとう。いやいや、この人が作ったお粥を食べる前に死んだらアカンで!蓋を開けたら、なんかすっごく美味しそうなお粥。あんたっていう人は料理までできるなんて……。もう、最高よ。



「じゃあ、いただきまーす!」
「……」
「ん、パク……。なんか、……口の中がピリピリする……」
「ああ、普段食べている米の色になかなかならなかったからな……。漂白剤を入れてみた」
「ブッハア――――!!!!コロスキか!?いやいや、心のどこかで、ボンボンのあんたのことだから、米に洗剤とかいれて洗うかと思ってたよ!たぶん、誰もが、そんな落ちを考えたよ!!でも、まさかの漂白剤落ちかい!?私の命をかけたボケをかましたんかい!?」
「ちなみに、洗剤もいれた」
「やっぱりいれたんかい!ってか、普通に考えて体内に入るものに漂白剤とか洗剤とか普通いれないよね?なんか、私の感動返してくれ!お願いだから返してくれ!!」



ああ、熱が回るや。くらり、として私はベットに倒れこむ。命をかけたツッコミをしたから頭から酸素がなくなってしまった。もう駄目だ、一寝入りしたい。



「はぁー。ごめん、殺生丸。私……気分悪いから寝」
「風邪の時は汗をかけばいいと言う」
「は?いきなりなに言っ……って、なに人のベットに乗ってるのよ!?」
「……知れたことを」
「しらん!何もしらんぞ!!どいてよ、寝れないでしょう!はっ!まさか、あんた最初からそのつもりで……!」
「……知れたことを」
「もう、イヤー―――!!!!」
「黙れ」



風邪で熱があるのに、ハッスルさせられて、私は五日間熱にうなされるはめになり、私の風邪が治った頃、時期同じにして殺生丸が今度は風邪をひき、彼の世話をしなければいけなくなった。
私は思った。今回のことは『漂白剤お粥事件』として、後世に語り継いでいこうと思う。







Pinkの遺伝子





20071104
『Pinkの遺伝子』パロディ