18、不思議な一行








 桔梗が去って数日。は桔梗が去った理由を詳しく村人達に話さなかった。ただ、どうしても行かなければならない場所がある。ということだけ伝えた。それは小夜も同じことで、あの晩に起こった出来事を小夜も口外はしなかった。
 桔梗が居なくなったことで多少の混乱もあったが、今は皆で力を合わせて、桔梗がしていたことをしている。
 そして、桔梗によって殺された僧は、寺の者達だけでひっそりと埋葬され、小さな塚を立てられた。もちろん、この僧を殺したのが桔梗だと言うことは、の胸の内に閉まってだ。
 小さな塚があるのは、僧が死に桔梗が去った場所だ。一日の初めと終わり。は塚に手を合わせるようにしている。そして、今自分が何をするべきなのかを考える。
 赤く世界をかえる夕刻の頃。いつものように塚に手を合わせる。そろそろ、自分もこの村を去らなくてはいけない。と思っていれば、かさ、と草の音がした。小夜だろうか。振り向くと、赤い水干…、垂り頸にしているのか。銀髪の長い髪。そして犬耳の少年がそこにいた。
「……」
 何かを呟いた彼には首をかしげた。この少年は……?
「犬夜叉ー!!待ってよ!!」
 少女の声がして、少年が振り返った。
「もう!どうしていつも先に行くのよ!!って……こんにちは」
「こんにちは。旅のお方ですか?」
 に気づいた少女に、にこりと微笑む。
 見かけない一行だ。犬耳の少年に見かけぬ服装の少女。法師に小さな少年。旅の者だろと思えば法師がの手を取った。
「私は、弥勒。こちらは、犬夜叉にかごめ様。七宝です。私達は旅の者なのですが……。もしよければ、あなた様のお名前を教えて頂けませんか?」
「え……。あの……、と言います」
様!優しげなあなたにぴったりなお名前ですね」
 そんな弥勒の後ろで、三人が大きなため息を吐いた。弥勒の次の言葉を知っているからだ。
様……。私の子を産んで下さらぬか?」
「……はぁ?」
様と私の子はさぞ可愛いでしょうな〜」
「はーい!そこまでにしましょうね、弥勒様!!」
 すりすりとの手を撫で回す弥勒に困り果てれば、かごめが軽く弥勒の手を叩いた。
「弥勒様、いいかげんにしてよね!」
!弥勒はいつもおなごにこういうことを言うんじゃ。騙されてはいかんぞ」
 大人びた少年は尻尾と獣足だ。犬耳の少年といい。この一行は?そんなことを思ったが明るい一行に心が和み、思わずくすくすと笑ってしまう。こんなに楽しい気分になったのは久しぶりだ。
「皆様。よければ、今日は寺でお休みになりませんか?」
 もっと、話がしてみたい。
 の言葉に、一行が嬉しげな顔になる。ただ、一人。犬夜叉だけがを睨み付けていた。





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20100423